新堂たける
劇中劇(と思わせて繋がった世界)の構造そのものがすごいのでなく、ど真ん中に論理的に解けるミステリがあったことがすごい。
子供たちが殺した、という最大の証拠である、存在しない包丁、そのために「何もない」キッチンの情報を活かし、さらに包丁複数刺しイコール4本刺した、という推理導線があまりにも見事。カードとして意味のなかった、キッチンに包丁があったであろうことにメンバーが気づいた時は鳥肌がたった。だからこそ4本刺しを見抜けなかったことが心の底から悔しかった。
これこそがミステリーの醍醐味。
マーダーミステリー本編が終わった後の真エンディング的にみんなで解く謎解き要素を用意してる作品は多い。しかし、今作はその後にこそ逃げないミステリーを持ってきた。本当にそれが美しい。
きっと少年が犯人なことも、相方が犯人なこともだいたいマーダーミステリー慣れた人ならメタで気づいてしまうだろう。だけど、そこで終わらせないミステリー、これ単体でも存在しうるミステリーの質量が素晴らしかった。
また、一度はこれは相方が犯人なことでホラー的に感じさせて、最後真っ向からタイトルの回収と犯人たちの自白、と言うテーマをぶつけてきた。これもまた、メタな伏線回収として美しかった。最後の動画を見てきて、この回収と犯人たちの思いが重なり、また、鳥肌がたった。
他の方の感想見てて、最後までホラー的に感じた人と、切ない話として受け止めた方の二分されていたのも面白かった。
9/17 追記
思ったよりこの作品あわない、という人が多いことを後から知った。僕はこういう時自分なりには納得したいのでちょっといろいろヒアリングや探ってみたりしたが、「アンフェア」「納得性が低い」「作りが甘い」「前半で子供指定できないのが無理がある」
ということのようだった。この部分に関して僕は考えもしなかったし、今でも全くそうではないと思うのだけど、この議論があまり実りがないことを僕は今までミステリーやミステリーイベントで経験してるので、そこは触れない。結局納得できるかどうかはもうその人の尺度の違いでしかないと僕は思うし、納得できない方が間違ってるとも全く思わない。
ただ一点。
そのアンフェアや拙い部分を作り、生み出したのは果たして誰だったのか?
ここが僕が一番思った点だし、この作品の僕の最後の鳥肌ポイントだったのです。実際僕たちはこの作品のキッチンと包丁のくだりに気づいた時「うわー、だからこのキッチンのカードだけ敢えて戻すしかけにしてたのかー、すげー」とか素直に話してました。そのあと「あ、これ推理ゲームをやってる人たちのRPだから言っていい台詞だよね?w」とも。(いや、後の台詞は厳密にはだめですけどw)
そう、本来マーダーミステリーで「作者の意図」を話すのはご法度なはず。でも、このゲームには許されている。なぜなら、ゲームの中で、ゲームをやってるから。
そして、このゲームの推理。作者の意図、を考えればまあ納得性はともかく、わかるようになってるわけです。たとえ、それが拙い作品と思おうとも。
そしてそこで最後にタイトルにつながる。
じゃあどうして「作者たち」はこんな作品を作ったのか。
あなたに「作者の意図」は伝わりましたか?